介護認定制度への疑問
いつ認定申請が出せるのでしょうか。



 介護保険制度の概要を示した、パンフレットが市町村から配布されたと思います。
ただ、この制度の概要と、介護保険を受けるためには「要介護認定を受ける必要がある」とは書かれていますが、どんな時に、どんな人が認定審査に申請できるのかは、説明がありません。
 介護保険法によりますと
 「要介護状態」とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生省令で定める期間(6ヶ月)にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態と規定されています。
 また認定された要介護度も効力は6ヶ月間で、認定から6ヶ月経ったら再認定が必要なことも記載されています。

 従って要介護が今後6ヶ月以上継続して必要になると見込まれる時期でないと、認定は受けられないことになります。

 さて、この見込まれる時期とはいったいいつの時点を指すのでしょうか。

 一般に身体障害者の肢体不自由の認定は、病状が固定すると考えられる1年を目安に申請することになっています。医療現場では常識的な期間だと思いますが、介護保険制度での要介護度の認定時期は、1年も待つことは出来ません。
 この認定時期は明示されていません。
 急性期の入院後、どの時点で、およその認定が可能かどうかは、曖昧にせずはっきり示す必要があると思います。
 と言うのは、昨年9月の医療法の改悪で、急性期病院の平均在院日数による縛りや入院管理料・看護料の低減化で、急性期病院の入院期間は次第に短縮され、急性期の症状を過ぎれば1-2ヶ月で退院を勧告されています。その後、病状が落ち着きリハビリの出来る専門病院へ転院できる方は幸せですが、リハビリ専門病院は少なく、また積極的にリハビリの出来る方も少ないと考えられます。
 継続して治療や介護が必要な多くの方は、介護施設に転院することとなります。
 老人保健施設の設立目的はこのための施設であったと思いますが。
 しかし、もしこの時期に認定が受けられねば、介護施設への入院・入所は出来ませんし、一般病院か医療型療養型病床群しかありませんが、都合良く受け入れ出来るかはわかりません。受け入れも難しいとなれば、患者はどうすればよいのでしょうか。
 まして、在宅で介護を行うとしても、認定が受けられねば、在宅介護サービスも受けられないことになってしまいます。
 要介護認定制度は要介護者の程度を6段階で認定せねばなりません。その時どの程度の等級にするかは申請時の状態像であり、急性期後の1-2ヶ月では、今後6ヶ月同じ介護度で済むかどうかは、誰にも判断出来ないと思います。認定調査も難しく、推測でかかりつけ医意見書が書けるとも思えません。
 介護認定は状態の安定した人たちだけは、ある程度の認定は可能と思いますが、急性期をすぎた本当に介護も必要な人たちには、介護保険が使えるかどうか不明瞭な制度だといえます。
 
こんな時どうする
 もっと急性期の人や痴呆症状の認定は複雑になります。
 「脳梗塞・片麻痺・意識障害で救急病院に入院した、意識はある程度改善したが、入院数日後より痴呆症状がひどくなり、暴言や夜間譫妄、点滴抜去、食事もとらず興奮状態となり昼夜逆転あり、急性期病院では脳梗塞の治療は行っているが、痴呆の治療できず同室の他の患者さんとのトラブルもあり、積極的リハビリは不能。急性期治療は終わったとして2週間程度で退院を勧告された。まだ医療とともに介護も必要な状態。」
 他の病院へ転院を勧められたが、受け入れ先の痴呆病棟は満床で見つけられず、仕方なく在宅で治療・介護を続けることになる。
 こんな症例もよく経験します。
 しかし、この例では在宅となっても介護サービスは当分受けられないことになります。自己負担でサービスを受けるしかないのでしょうか。

 この様な一過性と思われる痴呆症状も入院を経過すると少し治まることもありますし、在宅でないと治まらない場合、持続性に痴呆が固定する場合等すぐには予後予測判定は出来ません。
 この例では2週間程度で、病態は不安定と考えられますが、「6ヶ月間の常時介護を要すると見込まれる状態」として、すぐに要介護認定が行えるのとは思えません。
 すぐに出来ねば、どこにも行けず、在宅になっても介護サービスは受けられません。
 それ以外にも、「6ヶ月間の継続介護が見込まれる」と言う縛りで、短期間の介護サービスは受けられない制度であることは、多くの人は知りません。
 必要な人がすぐに利用できない制度では、何のための制度でしょうか。

 バラ色の介護保険制度ではないこと、制度自体が長期介護保険制度であること、などもっと十分な説明と国民の理解を求めるべきだと考えます。
             平成11年5月15日 玖珂中央病院 吉岡春紀



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