医療費の仕組み

診療費・入院費・検査の値段


医療費のしくみ

  皆さんが医療機関にかかったときの、医療費について簡単に説明します。
 と言っても、医療費の仕組みは誠に複雑で、しかも毎年3月末に改定され
 我々医療従事者もすぐには理解できないような複雑な仕組みがあります。
 これが、ときどきマスコミで報じられる毎年の診療報酬・薬価改定なのです。
 昨年9月に改定があり混乱しましたが、平成10年4月の改定も患者さんの自己
 負担が増える改定になっています。

  医療費(診療報酬)とは皆さんの診察でかかった、初診料(再診料)、慢性疾患の
 指導管理料、検査料、注射・投薬などをすべてを、医療機関は診療報酬明細書
 (レセプト)に記載し、翌月初めの指定日までに支払い基金の事務所に届ける必要が
 あります。
  基金では月の中頃に専門家の委員が集まり、各医療機関より提出されたレセプトの
 審査を行います。ここで問題のあったレセプトや不明なレセプトは提出された医療
 機関に返戻される(翌月廻し)か、病名に合わない検査や投薬は減点されます。
 問題のないレセプトの医療費は3ヶ月後に各医療機関に支払われます。
 しかし、その後にも市町村や会社の独自の審査を受け再審査があることもあります。

外来診療費のしくみ
  病気で医療機関にかかったときの支払いは、皆さんが持っておられる
  保険証の種類で1割-3割まで異なります。
  サラリーマン本人の負担は昨年1割から2割に負担が増加されました。
  老人保険では9年9月より受診毎に500円(4回まで)を支払って
  いただくことになりました。

 診察料
  初診と再診で異なりますし、診療所と病院、一般・老人と乳幼児では
  診察料は違います。(レセプトでは点数で計算します。1点10円です。)
 

 初診料(*昨年よりの変更)
     一般・老人では  診療所 270点、病院 250点(*+20点)
     乳幼児6歳未満は 診療所 335点、病院 315点
     3歳未満は    診療所 400点、病院 380点です。
  時間外に診察を受けたときには午後10時まで     85点
  深夜に診察を受けたときには(午後10時-午前6時) 480点
  休日に診察を受けたときには           250点
     の加算となります。

 例えば5歳のお子さんが初診で、午後11時に診療所で診察を受けた
 ときには診察だけで(335+480=815点)で8150円かかるわけです。
 これが高いかどうかは考え方ですが、
    急病以外は出来るだけ時間内に受診しましょう。
 

 再診料
  その病気の2回目以降の診察料です。
     一般・老人では  診療所 74点 、病院 59点(*診療所のみ+4点)
     乳幼児6歳未満は 診療所 101点、 病院 86点
     3歳未満は    診療所 109点、 病院 94点 です。

 特定疾患療養指導料
 老人慢性疾患生活指導料
   診察料とは別に慢性疾患では月2回を限度に指導料が加算されます。
   診療所では200点、100床未満の病院では135点、100-200床の病院
   では80点ですが200床以上の病院では指導料はありません。
  診察料・指導料とも診療所を優遇しています。
   (患者さんは外来で全く同じ診察や治療を受けても診療所の方が医療費
   が高い事があり、病院でも病院の規模(病床数)で違います。病床の数で
   外来の診療費が違う矛盾は説明できません。)
  この指導料は月2回ですので同じ月に慢性疾患で3回以上診察を受け
  たときには3回目以降は加算されません。従って同じ診察、治療を受け
  ても支払いが異なる事があります。
  その他に、特殊な疾患では別の指導料がある場合があります。

 投薬料・薬剤料
  昨年9月の改定で最も変わったのが薬剤費の自己負担でしょう。
  改定内容は別のページに詳細を載せていますが、これも患者さんの自己負担
  増のみの改悪と言えます。
  10年4月の改定では薬価は平均10%程度引き下げられました。
  薬剤料は薬価基準によって計算されますが、薬価は1錠 何十何銭と
  いう現在では使われていない銭の単位で計算します。これも不思議な制度です。
  また、1昨年から1処方8種類以上の内服薬を処方した場合には全ての
  薬剤料の90%しか算定できない規則となり、患者さんに混乱を与えています。
  その他、調剤料、処方料、薬剤情報提供加算などが加算されます
。   診療機関で薬をもらわない場合(医薬分業)では、診療機関では処方箋料76点と
  なり、調剤薬局では投薬料を支払います。
  調剤薬局の医薬分業制度は患者さんの自己負担は少し高くなりますが、内服指導や
  薬の管理、どこの薬局でも処方を受けられるなどのメリットもあります。

 30日分の投薬
  通常の内服薬の投与は2週間(14日)と規定されていますが症状の落ちついた慢性疾患
  では30日投与が認められています。
  これは、薬の種類、慢性疾患の病名で出来る薬と出来ない薬がありますので、
  患者さん個々で異なります。同じ高血圧のAさんが4週間分処方を貰ったが、
  Bさんは2週間処方しかできないこともあるわけです。
  特に新しい薬(新薬)が処方された場合には30日処方は出来ません。
  但し、年末年始と4月-5月のゴールデンウィークに診察が重なるとき
  には30日投与が出来るようになりました。
  しかし、これも通常の連休には出来ません。

検査の料金
 検査の料金は色々ありますが一般的な検査のみ記載します。
  心電図検査 150点、負荷心電図 320点、
  ホルター心電図検査 1500点
  超音波検査 腹部超音波検査 550点、心臓超音波検査 800点
        その他の部位  350点
        パルスドプラー加算 200点
  内視鏡検査 胃・十二指腸ファイバー 1140点 生検 300点
        大腸ファイバー 部位によって 900-1550点
  眼底カメラ 56点
  骨粗鬆症検査 骨塩定量 180点
  糖尿病負荷試験 200点+薬剤 インシュリン測定 900点
  レントゲン検査 単純撮影 胸部・腹部
            診断料81点、撮影料65点+フィルム
  胃透視検査・注腸検査 約1300点(前処置+フィルム含む)
  コンピューター断層(CT検査)
      頭部 665点、躯幹 890点+フィルム(大幅な引き下げ)
  MRI      頭部 1680点、その他1800点+フィルム
 

  血液検査
    一般生化学検査は丸め 5-7項目 155点、8-9項目 175点、
           10項目以上 185点 判断料 100点(月1回)
    末梢血一般 30点、血沈 12点、尿検査一般 28点、
    便検査 潜血ヘモグロビン 65点、血液型 ABO 35点
    HbA1c 95点
    腫瘍マーカー 1項目190-450点、2項目400点、3項目500点
    肝炎ウィルス 1項目150-500点、3項目520点、4項目620点、
           5項目780点
  血液検査は他にも多種有りますが、一般に丸めと言われ多項目検査
  すれば漸減性が取られています。

入院料
  入院料に関しては外来よりもっと複雑で簡単に述べることは出来ません。
  病院の体制、看護体制、環境、入院する患者さんの年令、疾患など
  で異なります。
  入院料は入院時医学管理料・入院環境料・入院医療管理料・入院食事療養・
  看護料が基本でそれに投薬料・注射料・検査料・手術料・処置料・理学療法料等
  が加わります。

 入院医学管理料
  一般病院では2週間まで571点/日が3ヶ月を越えると157点/日、1年
  を越えると101点/日となります。
  また、老人病院では2週間まで225点/日が3ヶ月を越えると162点/日、
  1年を越えると105点/日となります。
  このように一般病院では漸減性が厳しく、急性期の治療が終われば
  早期退院を勧告される理由です。一方老人病院では最初から点数が
  低く押さえられています。

 入院食事療養費
  1日1920円、特別食加算は350円です。温かい食事、食事の時間の
  配慮、特に夕食を6時以降とする特別管理加算は200円です。
  食事代の内自己負担金は760円/日と決まりましたが、これは窓口
  で徴収するだけで診療報酬より引かれ医療機関の増収ではありません。

入院料の支払い
  老人患者さん以外は、入院料の内、保険種類での自己負担分を支払います。
  手術などで医療費が高額になる場合に、自己負担が月63600円を越える場合は
  高額医療の還付制度があります。最寄りの市町村役場や社会保険事務所の窓口で
  ご相談下さい。
  老人患者さんは1日1100円+食費760円、合計1860円/日を支払います。
  今回より入院負担金が1100円に増額されました。
  これらの改定もあまり患者さんにも知らされず改定されます。

ざっと述べましたが、このように医療費は分かりにくいことばかりです。
我々医師会も、もっと簡潔な診療報酬制度を望んでいますが、ますます複雑に
なるばかりです。
今後は介護保険の導入で在宅医療や慢性の老人医療は医療保険制度から外れる
可能性もあり、ますますわかりにくくなるものと思います。

           平成10年4月8日    玖珂中央病院 吉岡春紀


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