われわれは国民皆保険制度を守るため
      混合診療の解禁に反対しています。

 ○ 日本の医療制度では、国民は健康保険や社会保険などに加入し、毎月保険料を支払うかわりに、万一病気にかかったときには「いつでも・どこでも・ 誰もが」公平な医療を公平な負担で受けられ、万一高額な医療費となった時も、負担は「支払いの限度額」が決まっており、安心して医療を受けることが出来ます。この制度を国民皆保険制度と言い、世界に誇れる医療制度なのです。

 ○ ただし、この制度では診療の制限があり、国が有効だと認めた病気の薬や検査、治療にかかった医療費は保険が認められます(診療報酬制度)が、それ以外の新しい薬や治療法、またはまだ効果がはっきりしていない薬や治療などは保険で診療することは認められていません。診療を行う医師は保険医として登録され、このルール守る義務があるのです。日本で認可されていない海外での新しい治療や薬を行う事は原則出来ないのです。これは国民皆保険制度を守るルールです。

   ○ 小泉内閣や経済財政諮問会議では医療費を削減するために、混合診療を解禁しよ うとしています。混合診療とは、ルールを守った保険診療と自由診療が混在すると言うことですが、公的保険の費用と自由診療の費用を一つの治療のなかで混合させることであり、今の制度はこれを禁止しているのです。要するに保険で認められた医療と認められていない医療を一緒に行って医療費を請求してはならないと言うことです。

 ○ 混合診療を解禁すれば保険診療分の医療費の出費を抑えられ、今後新しい薬や高額な治療法等も保険外の自由診療とすれば医療費が抑えられると思っているからです。また混合診療を認めることは、現在認められている治療法なども保険から外すことも出来るのです。例えば風邪や胃腸炎などの軽医療も保険外にすれば医療費は抑えられますし、その方向に進んでいます。

 ○ 医学の進歩はすばらしいものがあり、新薬や新しい治療法の開発で、これまで治療が出来なかった病気も救命できたり社会復帰できるようになっています。ただこれをすべて保険で認めることは医療の高騰を招き、制度の維持が出来ないことや、有効性や副作用など十分な検討も必要になり、直ぐには認可されません。

 ○ しかし、現在保険に認められていない高度先進医療の一部では、特定療養費制度という公的な混合診療が認められている制度もあります。この制度を有効に活用してゆくことで、直ちに混合診療全体を解禁する必要はないのです。特に今、がん患者さんが求めている、「日本で認可されていないが、国際的に認められている抗がん剤の自由診療」などについては本来は保険適応を求めるべきですが、認可の手続きなど手間取ることもあり緊急避難的に認めることは出来ると思います。

 ○ 混合診療解禁で自由診療が認められれば、患者さんの負担は明らかに増えますし、高額な負担をしきれない患者さんも増え、公平・平等な医療制度が崩れてしまうことになります。自由診療では高額医療費の還付制度は無いため、重度の病気では莫大な自己負担を覚悟せねばなりません。こんな負担は誰もが出来るわけではありません。また患者さんの弱みにつけ込んだ、悪質な医療が増える危険もあります。

 ○ 混合診療の全面解禁は、実は厚労省も反対しているのです。我々医師会も国民皆保険制度を守るため混合診療の解禁に反対しています。

            平成16年11月  
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医療制度改悪に反対して背面を黒にしています。

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