いよいよ介護認定審査会が始まりました。
でも一次判定ソフトの精度は不安だらけです。

 私も当地の認定審査会(3合議体)の全体部会の会長となってしまいました。
 元々、介護保険制度は総論賛成・但し認定審査制度には反対・不要論の立場ですので、認定審査はしたくないのですが、医師会の立場上仕方ありませんでした。
しかし、審査会の会長に就任するならば「出来るだけ公正に・公平に・迅速に」と各委員にも医師会員にも説明し協力していただくよう要請しています。

 ところが厚生省の99年一次判定ソフトの使用結果を見ますと、昨年のモデル事業の判定ソフトとは少し変わってはいますが、基本的には問題だらけで、しかも検証も無く本番で使用されることに、「これでよいのだろうか」と感じています。

 我々の審査会も、本番前のの審査会の予行演習を行ってきました。
 最近はネット上で一次判定ソフトも公開されており、認定調査項目がわかれば誰でも一次判定結果が分かるようになっています。またあるソフトでは、すべての項目を入力した後、判定結果を知る方式ではなく、調査項目を入力すれば、その時点の要介護度がリアルタイムに変化する方式もあります。
 そこで予行演習の症例で、調査項目を入力してみて、余りの変化にびっくりしました。
 ある脳梗塞後遺症と軽度の痴呆例です。
 状態像からは介護度3程度と考えられます。
 脳梗塞後遺症・片麻痺の項目を入力し、歩行、つかまりだちなどの移動・複雑動作の状態を入力し終わって要介護2と表示されました。その後、第5群の身の回り項目を数カ所入力し要介護3になりました。しかし別の項目を追加したとたん、突然表示は要介護2になってしまいました。そして最終一次判定は要介護度2となりました。念のためこの項目を外すと要介護3にもどります。

 一次判定ソフトの分析で詳しいDr・ハッシーのHP 土肥先生のHPで盛んに話題になっている逆転現象を現実に経験しました。
 要するに重い症状項目を入力したら、突然意味無く介護度が低くなったりすることで、多くの実例が示されていますし、厚生省の提示した「状態像の例」でも要支援や要介護3-5の例である項目を病的として入力したら介護度が下がってしまったり、立位などを支えあれば可から出来るにしたら介護度がひどくなってしまったりの報告がされています。
 一般の一次判定の認定ソフトでは、結果は全て入力した最後ですので理解できにくいかも知れません。このソフトはリアルタイムの介護度が出ますので、どの項目を入力したり外したりで介護度が変わることが、認定審査前にわかります。

 こんなことが起こってしまうなら、一次判定は無意味だと言われても仕方ないかも知れません。たまたま入力した項目によって、簡単に介護度が変化してしまうことがあるのですから。
 それもどこで起こるかは出たとこ勝負。
 一次判定は「運」も必要と言うことです。
 また、6ヶ月後の再認定時に症状「改善」していても、その結果介護度がアップすることもあり得るし、逆もあることと言うことと一緒です。

 十分な検証せずに、本番スタートした99年一次判定ソフト。
 これでよいのでしょうか。
 こんな事で、まだ認定審査には確実な公平性を求めることは出来ないと思っています。

                 平成11年10月6日 玖珂中央病院 吉岡春紀

 参考にした一次判定エミュレーションソフト
   畑先生作成
   尾形医院ホームページ



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