山口県の転換意向調査

 先日のキャリアブレインニュースでは
2006年の医療制度改革で、当時に約38万床あった療養病床のうち、介護保険を使う「介護型の療養病床」(約13万床)を全廃し、医療保険を使う「医療型の療養病床」(約25万床)を15万床にまで減らす計画を立てた
 しかし、「受け皿となる施設が不足している」との批判が相次いだため、約2万床の回復期リハビリ病床を削減対象から外すなど計画を修正。今年7月には、「医療型の療養病床」の削減目標を約22万床に緩和する方針を決定している。」
 と報道され、療養病床再編計画のうち、療養病床削減は当初の計画よりも緩和されて削減目標が7万床減らされていました。
 全国では療養病床38万床を15万床に削減する予定が、22万床に押さえられたと言うことですが、どうもこの療養病床再編計画自体が、企画した厚生官僚の発言でも根拠のない数字でスタートしたものですが、調べてみると療養病床38万床という数字も一人歩きをしているように感じています。

 この話の前に療養病床の各都道府県の対応も年々変化していますので、まず当地の実情をお話しします。 

 私たちの山口県でも、山口県医療費適正化計画委員会報告書では、昨年8月の転換意向調査の結果、18年10月の県内の療養病床9.565床(医療療養病床5.911床、介護療養病床3.654床)を、24年度には医療療養病床4,153床に削減し、介護療養病床は全廃され、残りの5,412床は新型老人保健施設・老人保健施設・老人ホームなどの介護施設に転換するという報告でした。
 実に現在の県内の療養病床施設の56.6%を削減するという計画で、全国的にみても削減の目標平均39.1%を大きく上回る計画でした。

 しかし、その際転換意向調査とはいえ、受け皿となる新型老人保健施設の内容も全く決まらない状態でのアンケートであり、多くの施設が転換未定の返事だったのですが、この報告では、未定は考慮されていませんでした。

 そのため、多くの医療施設から不満や県への不信もあり、山口県が全国的に削減率が異常に高いこともあり県医師会でも介護保険対策委員会などで、山口県の再調査や受け皿がもっと具体的になるまで対応を待って欲しいと要望していました。

 そして、今回20年6月に、山口県より新たな療養病床転換意向のアンケート調査がなされました。この調査でもまだ新型老人保健施設の転換の内容が不明で転換の意向が示しにくい状態ではありましたが、県の担当者より今回は未定は出来ないこと、個別に電話調査などがなされて、今回は全医療機関100%の調査が行われ、この結果未定は0.7%でした。

 先日発表された20年6月の転換意向調査結果を示しますが、転換意向は前回の調査とは大きく異なっていました。


転換意向
 ○医療型療養病床
  医療型療養病床、6,241床の転換意向は、
   医療療養病床に留まるとの意向が 89.3%(5,575床)、
   新型老健施設へ 4.8%(300床)、
   従来型老健施設へ 1.8%(112床)であり、
   その他 回復期リハへ92床・一般病床へ6床・グループホーム54床で、

   廃止も10床となりました。未定は0.6%(38床)でした。

 ○介護療養病床
  介護療養病床3,283床の転換意向は、
   新型老健施設が 52.0%(1,707床)、
   医療療養病床への転換が 23.2%(761床)、
   従来型老健施設へ 16.8%(553床)であり、
   その他回復期リハ78床・一般病床57床・グループホーム18床・廃止8床 
   未定は0.7%でした。

 ○全体
   全体では療養病床全体(9,524床)の転換意向は、
   医療療養病床へ    66.5%、6,336床
   介護型療養老健施設へ 21.1% 2,007床
   従来型老健施設    7.0%  665床
   その他 4.7% 未定 0.7% となりました。

 昨年の報告書と削減目標数が大きく違いましたが、山口県の対応として「国は抑制策を見直すべきだ」という方針にかわり、「削減目標は各医療機関の意向を尊重する」という結論でした。
 今回の療養病床削減率は56.6%から33.5%になります。

 20年9月、山口県健康福祉部長寿社会課からの通達では、今回の意向調査を元に各市町で事業計画を策定することが記載されていました。また今後転換意向を変更する際には、改めて県・市町に協議が必要であることも書かれていました。

 これほど大きな変更がされたことに驚いていますが、現実を見つめて判断した県の対応は歓迎したいと思います。しかし、医療費削減のためだけで国の行った療養病床削減計画は、果たして何だったのだろう、削減の根拠があったのか今更ながら役人の無策・無責任に驚いています。

 介護療養病床の全廃は法律で決まっていますので平成24年3月には、介護療養病床という施設はなくなります。
 しかし、この介護療養病床は本来は全て廃止され、新型老人保健施設や介護老人保健施設など介護施設に転換されるものと思っていましたが、それだけではなく、現在はこの24年3月までの期間内なら新型老人保健施設だけでなく医療保険制度の一般病床へも、医療療養病床にも自由に転換可能になっています。
 医療機関を守るという名目でしょうが、地域医療計画や介護保険制度をも無視した特例だと思います。そのために介護療養病床の中には逆に医療療養病床にも転換が認められていますので、当分は医療費増加になると思われます。療養病床再編問題は最終的には医療療養病床をどの程度削減するかが各都道府県の検討で決まってしまうと考えますが、今のところ、途中で医療療養病床が全国的に増加してしまっいることも、多くの国民は理解できないと思います。