【新體詩見本】
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一 外山調
火鉢の上に鐵瓶が
落て居るとて無斷にて
他人の物を持行くは
取も直さず泥坊で
泥坊元來不正なり
雲を霞と逃ぐるとも
早く繩綯ひ追駈けて
縛せや縛せ犯罪人
二 福鋳イ
我日本の内とても
年を取れるは婆さんぞ
若き婆さんなきのみか
不思議に婆さん女なる
是れぞ即ち所謂の
然りと雖も日の本の
女は遂に婆さんぞ
三 上田調
今釜出でしほや/\の
いともおいしきあぶり芋
手に取り見れば湯氣の露
丸燒月に似たるかな
晝餐(ひるげ)にかへて買はまほし
一口やれば忘られぬ
汝が又の名の十三里
この味めでぬ人やある
四 鐵幹調
白きを見れば夜ぞ更くる
「姑蘇城外(くそじやうぐあい)寒山寺」
數ふる指も寐つ起きつ
首縊らんか鳰(にほ)の海
ぶら下らぬぞうらみなる
身をば投げんか鷲の峰
もぐり込まぬぞ恨なる
小楊子むづと手に執(とり)て
喉笛美事に掻切れば
ちよいと痛めど血は出でず
死するも命別儀なし
「天地玄黄千字文」
無理心中は止むべきぞ
外山調、福鋳イ、上田調、鐵幹調、この四つは已に示しぬ
折柄福註謳カの「何とか原田の重吉氏」といへる金聲玉音
を又も惜氣なく投出されたるに慌てゝ暫し途切れたるが長
きは御退屈とは落語家も言ふことなれば此の見本も今日限
り切上ぐべし扨
五 佐々木調
小桶を籠めて立まよふ
岡湯のあたり雲起り
踏はだかれる町内の
頭の背に龍躍る
臀(いしき)連なる柘榴口
手拭頬にあてがひて
そは中々に傅の君
きこえ侍らず言の葉の
理(わり)無しとにはあらねども
そも逢初めしと唄ひつゝ
猪レ板敲き聲高く
やようめたまへ番頭よ
後の新体詩家たらん者よく/\此等諸大家の調を辨へて考
へ合したらんには裨益する所尠からざるべし猶おまけとし
て懸賞募集軍歌調と申すを一つ二つ御覧に入るべし無論選
者は鳥居忱先生なり
(其一)
いざや喰らはん椀の飯
片手に箸を取上げて
煮豆味噌汁香の物
腹のふくるゝそれ迄は
(其二)
残忍苛酷の債權者
支拂命令差向けつ
供託金を上納し
強制執行申請す
解除願はゞ速かに
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