【魂の配達】
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――おれの魂は大分すりへらされた
注文しておかなければならない
私はすぐ電話をかけて魂を五百匁だけ注文する
いつものやうにメッセンジャボーイが
自轉車でもうまもなく配達してくれることであろう
私は早く持つてくるやうに待ちかねてゐる
すぐに注射して
ハツラツたる精神たりうるよろこびに燃えて
玄關をあちこちとあるきながら・・・。
【コ用なる月】
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――月だつて
食ヘネエことはないや・・・
腹のヘッタ魚は
池の中で月の影を噛つた
――食つても、食つても
オシマヒにならネエ
ナンテ、コ用にできてやがるんだらう
エヘッ、エヘッ
魚は池の中でそんなことをつぶやきながら
ガツガツ月の影を噛つた
【求むる部屋】
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春も終つたといふのに
世の中は夏になつたといふのに
私は科學者のやうな心を抱いて
今日も貸間を尋ねながら
當てもなく泥濘の町をあるきつゞける
ぱちぱちと火花を散らして
両側の店々には心臓が並んでゐる
い顔をした賣手がゐる
・・・・買ひたいけれど
買ひたいけれども私も心臓をもつてゐるし
餘計の金も無いのでね
――欲しいのは落ちつける部屋だ
その氣持ちのよい貸間はないかね?
【染井墓地】
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わたしはまい日たそがれになると
このしめりきつた墓地の中の細い道を
ぶらぶらとうろつきあるくことがすきだ
木の葉をゆるがす風は沈黙のなかにさやかな音を立て
ならんだ墓はどれもはつきりした輪郭をみせてゐる
そして私がたちどまると
かすかな豆腐屋のらつぱの音がきこえてくる
すばらしくたくさんの靈魂がかさなりあつた
そのやはらかな土を足の裏にかんじつつ
私はこのたそがれの墓場をあゆむことがすきだ
あゝこのしめつたみちは
自分をはつきりみせてくれる
ただぶらぶらとうろつきあるくものにはほんたうにいゝ道だ
【金魚と雀】
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金魚がガラス鉢で泳いでゐた
・・・・だけど、あたいイヤだなア
ガラス鉢はせまくつてキュウクツでイヤだなア・・・
金魚はかくてイロイロ苦心して空中を飛行することを研究した
・・・・諸君はかの雀が
かつてガラス鉢で泳いでゐた金魚であつたことを知るまい
モチロン先天的の雀もあるし
もとの金魚のまゝでガラス鉢の中にゐる奴も多いが・・・
【馬】
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山のやうに材木を積んで馬は荷馬車をウンコラショと引つぱつた
ウンコラショ、ウンコラショ
馬は一心に、街道を進んで行つた
馬子も一心に歩くことに陶酔してゐた
・・・・ガタン、ゴクン、ゴトリと音がひびいて
それがまた妙に馬子を嬉しがらせた
馬子はそのひびきに歩調を合せて進みながら
フトをかしくなつてヘッヘと笑つた
馬はそれを横眼でながし見ながら
ニヤリとずるさうな笑ひを洩した
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