野川 隆
◆
のがわたかし(1901-1944)
◆
| 千葉市に生まれる。北園克衛(橋本健吉)、稲垣足穂らと『ゲエ・ギム・ギガム・プルル・ギムゲム』という ダダ系の同人誌に加わった詩人として知られるが、やがてコミュニズムに転換し、ナップ(全日本無産者芸 術連盟)に参加。1935年、治安維持法違反で逮捕される。1937年、妻とともに満州に渡り‘貧農中心主義’ 的な「合作社運動」に接近した。1938年、ハルビンで詩集『九篇詩集』を刊行(私家版 発行者:野川邦子)。 1941年の「北満合作社事件」で検挙され加療の為の仮出獄直後に死亡。/「(外地)の日本語文学選2」より |
『九篇詩集』より
| 【葬式】 ▼ 親しい者を亡くした上に 此処では不幸がたたみかける 白衣の女がかなきり声をたてれば 太鼓やラッパががなりたてて 爆竹までが匍ひながらはぜ割れ 乞食も金持も寄つてたかつて 身を切るやうなふるまひを食ひちらし 金泥で面子を飾つた くそ重い棺桶に 張子の自動車や馬奴がひよこひよこと続き 葬式のあらしの吹き過ぎた院子には 散らかつた紙屑や残肴の他は うそ寒くひるがへるあせた色紙と そつとのしかかる借金の魔の手が 孤独な広庭におおひかぶさり 遺族の赤ん坊ののどまでもしめつける 呼蘭北大同街(ハルビン北郊の町) 【どうして窓を開けないの】 【役所の門】 【賄賂役人】 |