【勞働者よ】
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仕事着のほこりを拂ふ勞働者よ。
汝の肺を潔むる術を知らざるか忘れしか。
あはれさよ。
汝の肺も然くけがれたるぞ。
油にまみれし手先を洗ふ勞働者よ。
汝の濁れる血を如何にか潔むる。
あはれさよ。
汝の血も肉も然くけがれたるぞ。
勞働者よ。
衣服は仕事着に替ふればよし。
されど、されど、
心せよ勞働者。
汝の血肉は唯一つなるぞ、
唯一つなるぞ。
替ふべくもなし。
【友よ】
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海苔すくふ翁の背にも春の陽は照る。
海苔乾す少女のK髪にも春風は戯れる。
されど
K煙の下に集へる人々に何時暖き陽の照ろう。柔かき風の吹かう。
友よ。
機械を憎み文明を呪ふ友よ。
自然を愛し原始を慕ふ友よ。
海苔すくふ人々のい吐息をみずや、生活の、疲れである。
海苔乾す老女の背に泣く兒をみずや、
營養不良のあの顔を。
あゝ友よ
人等は畫と見やう。詩と聽かう。
ローマンチツクと考へやう。
されどそは餘りの淺見なり。
友よ
凡てが忌はしき、
生活の叫びなり。
生存の戦なり。
食の奪ひ合ひなり。
【人の流れ】
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人の流れだ、人の流れだ。
朝の六時と晩の六時と
流れ出て流れ入る。
人の流れだ、人の流れだ。
人の流れを見てほゝゑむ資本家よ
人の流れは思想の流れの象徴なるぞ
水は流れて海へと急ぐ
萬里の荒浪千仭の怒濤も
谷間に漏るゝ清水の集りなるぞ。
人の流れは何處(いづこ)へそゝぐ?
海につなみのある如く
人の流れの集るそこにも
強き力のつなみがあるぞ
【装飾された機械】
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エツー、あなた!
稼げば食つてゐられるつて。あなた!
あなたはそれでよいのですか?
あゝ
あなたは知つてますか
毎日にあなたが機械に油をやる譯を
そうです。動かなくなるからです。
實用に適しなくなるからですよ。
あなたが食つて行けるのも
丁度機械が
油を貰ふのと同じですよ。
そうぢやないつて?
あなたの使つてゐる機械の處々に、砲金の組込まれて
あるのをあなたは御存じですか。
砲金は鐵より高いのですよ。
實用に適せしむる爲には
資本家は銅も使ひませう。白金も使ひます。
必要とあらば金とて厭はずダイヤでも使ふでせう。
けれどもあなた。
あなたは装飾された機械を見た事がありますか?
【犬よ猫よ】
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犬よ猫よ
パンが慾しさに狆々する犬よ。
背を撫づれば泣く猫よ。
お前の祖先が
狼であらうと
虎であらうと
今のお前は主人があるよ。
お前がどんなに吠ゆるとも
お前がどんなに爪を磨くとも
お前は矢つ張り家畜だよ。
飼はれて居ては
いつまで經つても
奴隷の心は失せないよ。
ほんとの自分に還れやしない。
犬よ!猫よ!
現代の賃銀勞働者よ!
奴隷の境遇を打ち捨て
早く自分にたち還れ
【我こそは悲しけれ】
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我こそは悲しけれ。
齢今二十五。
過ぐる年の長き煩ひに、
肺をいためて呼吸はし。
去ぬる年に眼を病みて
両眼半ばはくらし、
今又脚を煩ひて、
歩行に悩む。
我こそは悲しけれ。
齢今二十五。
新しき生命に生きんとすれば
朽ちたる凡てを排除せねばならぬ。
眞實に生活せんとせば
幾多の虚僞を破壊せざるべからず。
古き一切に對する叛逆と破壊!
斯く叫びて既に數年
我こそは悲しけれ。
齢今二十五。
我の生長を妨害する世の一切と死を賭して戦はん。
されど我弱き心、幾度か立淀む。
貧しき父……
繊(かよ)はき體……
かくて我は妥協しぬ。
『二十五にして飛躍せん』
我こそは悲しけれ。
齢今二十五。
その二十五.
光のどけき春の日よ。希望に満ちし
愁たゞよふ春の夜よ。前途はくらし
我は旅立ちぬ。
先輩の言に逆き、友の言葉に振向かず、
家を捨て、父母を捨て、故郷を捨て。
我こそは悲しけれ。
齢今二十五。
かよわき體!
戀人にすがりて生き、
友に援けられて生き
僅かに半年。
病を得て故郷に歸る。
収穫とては『赤い實』只一顆。
我こそは悲しけれ。
齢今二十五。
振捨てし故郷に歸り、
貧しき父の惠のつゆに、
愛しき弟妹の心盡しに、
病を抱いて涙にくれ、
一日一日を安逸に送る。
不幸の子よ。不幸なる我よ。
我こそは悲しけれ。
齢今二十五。
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