林芙美子
◆
はやしふみこ(1903-1951)
◆
| 山口県下関市生まれ。複雑な家庭環境からいくつかの小学校を転々とし、1918年15歳の時、広島県 尾道市立高女に入学。女工や女中などのアルバイトをしながら文学書を読み詩作を始めた。1923年、 東京の大学生に婚約を破棄され、『放浪記』の原形となった歌日記を書くことで傷心を慰める一方、 詩や童話を書いては雑誌社に売り歩いた。1924年、詩人で俳優の田辺若男を知り、彼を介してアナ ーキスト詩人・萩原恭次郎、壺井繁治、岡本潤、高橋新吉、辻潤らと知り合い大きな影響を受けた。 同年、友谷静栄と詩誌「二人」を創刊。翌年、新進詩人の野村吉哉と同棲するが一年で別れ、その 後画学生平塚緑敏と結ばれ、赤貧のうちにも幸福な日々を迎え、創作に打ち込めるようになる。19 28年「女人芸術」に『放浪記』と副題のある散文を連載し始め、1929年それと関係深い詩集『蒼馬 を見たり』を出版した。/「日本現代詩辞典」より |
![]() |
戦後の詩から
| (冷薄の宇宙に) ▼ 冷薄の宇宙に 何処かできのこのように開く原子力 支配は雲に針をさすようなものだ 済んでしまったところで 何の支配も人間は受けつけない 只生きるだけだ。 誰かが来てまた地を支配する 海に石を投げつけたようなものだ しぶとい人間の心はびくともしてはいない 只生きて這っているだけだ 説教や思想が流れて来ても 煙草の煙のようなものだろう すぐ消えて宇宙はものうく ゆっくりと寝返りを打つだけだ 人間は放り出される瞬前までも生きる ぶつくさ云いながら這いずりまわる ローマ人がユダヤを ヘロデの血からでたガリラヤを・・・ 只それだけの短い歴史だ。 (全集3「泣虫小僧・愛情」) (いまにまた雪が降る) (作家にとっては習慣が) (天井をみればくもの巣) (一切の強欲の軋轢) (心を捨ててまたひろう) |