【無題】
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太陽は神々の蜜である
天涯は梁木である
空はその梁木にかかる蜂の巣である
輝く空気はその蜂の卵である。
Chandogya Upa. III I. I.
こゝは天上で
粉雪がふつてゐる……
生きてゐる陰影
わたしは雲のなかに跪いて
その銀の手をなめてゐる。
+------+
(註)
■Chandogya Upa(チャーンドーギャ・ウパニシャッド)
=古代インドの梵書
【囈語】
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竊盗金魚
強盗喇叭
恐喝胡弓
賭博ねこ
詐欺更紗
涜職天鷲絨
姦淫林檎
傷害雲雀
殺人ちゆりつぷ
堕胎陰影
騒擾ゆき
放火まるめろ
誘拐かすてえら。
【大宣辭】
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かみげはりがね
ぷらちなのてをあはせ
ぷらちなのてをばはなれつ
うちけぶるまきたばこ。
たくじやうぎんぎよのめより
をんなのへそをめがけて
ふきいづるふんすゐ
ひとこそしらね
てんにしてひかるはなさき
ぎんぎよのめ
あかきこつぷををどらしめ。
【曲線】
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みなそこの
ひるすぎ
走る自動車
魚をのせ
かつ轢き殺し
麗かな騒擾をのこし。
【手】
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みきはしろがね
ちる葉のきん
かなしみの手をのべ
木を搖る
一本の天の手
にくしんの秋の手。
【だんす】
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あらし
あらし
しだれやなぎに光あれ
あかんぼの
へその芽
水銀歇私的利亞
はるきたり
あしうらぞ
あらしをまろめ
愛のさもわるに
烏龍茶をかなしましむるか
あらしは
天に蹴上げられ。
+------+
(註)
■水銀歇私的利亞=スイギンヒステリア
【圖案】
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みなそこに壷あり
壷のなかなる蝙蝠は
やみよの紋章
ふね坂をのぼり
朧なる癇癪三角形
くされたる肉にさく薔薇
さてはかすかな愛の痙攣。
【妄語】
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びおろんの胴の空間
孕める牝牛の蹄
眞實なるものには、すべて
或る一種の憂鬱がある。
くちつけのあとのとれもろ
麥の芽の青
またその色は藍で
金石のてざはり
ぶらさがつた女のあし
茶褐で雪の性
土龍の毛のさみしい銀鼠
黄の眩暈、ざんげの星
まふゆの空の飛行機
枯れ枝にとまつた眼つかち鴉。
【烙印】
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あをぞらに
銀魚をはなち
にくしんに
薔薇を植ゑ。
【青空に】
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青空に
魚ら泳げり。
わがためいきを
しみじみと
魚ら泳げり。
魚の鰭
ひかりを放ち
ここかしこ
さだめなく
あまた泳げり。
青空に
魚ら泳げり。
その魚ら
心をもてり。
【樂園】
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寂光さんさん
どろまみれ豚
ここにかしこに
蛇からみ
秋冴えて
わが瞳の噴水
いちねん
山羊の角とがり。
【發作】
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なにかながれる
めをとぢてみよ
おともなくながれるものを
わがふねもともにながれる。
【曼陀羅】
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このみ
きにうれ
ひねもす
へびにねらはる。
このみ
きんきらり。
いのちのき
かなし。
【かなしさに】
▼
かなしさに
なみだかき垂れ
一盞の濁酒ささげん。
秋の日の水晶薫り
餓ゑて知る道のとほきを
おん手の葦
おん足の泥まみれなる。
【岬】
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岬の光り
岬のしたに群がる魚ら
岬にみち盡き
そら澄み
岬に立てる一本の指。
【十月】
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銀魚はつらつ
指先の刺疼き
眞實
ひとりなり
山あざやかに
雪近し。
【印象】
▼
むぎのはたけのおそろしさ……
むぎのはたけのおそろしさ
にほひはうれゆくゐんらく
ひつそりとかぜもなし
きけ、ふるびたるまひるのといきを
おもひなやみてびはしたたり
せつがいされたるきんのたいやう
あいはむぎほのひとつびとつに
さみしきかげをとりかこめり。
【持戒】
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草木を
信念すれば
雪ふり
百足ちぎれば
ゆび光り。
+------+
(註)
■持戒=戒を守ること
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【光】
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かみのけに
ぞつくり麥穗
滴る額
からだ青空
ひとみに
ひばりの巣を發見け。
【氣稟】
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鴉は
木に眠り
豆は
莢の中
秋の日の
眞實
丘の畑
きんいろ。
+------+
(註)
■氣稟(きひん)=生まれつきもっている気質
【模様】
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かくぜん
めぢの外
秋澄み
方角
すでに定まり
大藍色天
電線うなる
電線目をつらぬき。
【銘に】
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廢園の
一木一草
肉心
磁器
晶玉
天つひかりの手
せんまんの手
その手を
おびえし水に浸し
目あざやか。
【くれがた】
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くれがたのおそろしさ
くりやのすみの玉葱
ほのぐらきかをりに浸りて
青き芽をあげ
ものなべての罪は
ひき窓の針金をつたはる。
【さりゆてゑしよん】
▼
純銀霜月の
光にびしよ濡れ
いちねん
智慧の玉乗り
頭蓋がないぞ、おい、
玉は陰影を引き
みちばたの草にかくれた。
+------+
(註)
■さりゆてゑしよん(salutation)
=挨拶(の言葉)、手紙の書き出し
【鑿心抄】
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秋ふかみ
さみさらに
栗鼠鳴き
瞳を永遠につらならせ。
*
立てる十字架
立てるは胸の上
ひねもす
にくしんの蟲を刺し。
*
しろがねの
ほんねんのかねは
こずゑに
しづかなり。
わがそら
わがてのうへに
ゆれゆれて
したたる。
*
やまにはやまのしんねん
ひとにはひとのりんくわく。
+------+
(註)
■鑿=のみ(工具)
【肉】
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癩病める冬の夜天
聖靈のとんねる
ふおくは悲しめ斷末魔
純銀食堂車
卓上に接吻あり
卓上永生はかなしめ。
【晝】
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としよりのゐねむり
ゐねむりは
ぎんのはりをのむ
たまのりむすめ
ふゆのひのみもだえ
そのはなさきに
ぶらさがりたるあをぞら。
【汝に】
▼
大空
純銀
船孕み
水脈
一念
腹に
臍あり。
【燐素】
▼
指を切る
飛行機
麥の芽青み
さみしさに
さみしさに
瞳を削げ
空にぷらちなの脚
胴體紫紺
冬は臍にこもり
ひるひなか
ひとすぢのけむりを立て。
【午後】
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さめかけた黄い花かんざしを
それでもだいじさうに
髪に插してゐるのは土蔵の屋根の
無名草
ところどころの腐った晩春……
壁ぎはに轉がる古い空つぽの甕
一つは大きく他は小さい
そしてなにか秘密におそろしいことを計畫んでゐる
その影のさみしい壁の上
どんよりした午後のひかりで膝まで浸し
瞳の中では微風の纖毛の動搖。
【風景 純銀もざいく】
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いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
かすかなるむぎぶえ
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
ひばりのおしやべり
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
やめるはひるのつき
いちめんのなのはな
【誘惑】
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ほのかなる月の觸手
薔薇の陰影のじふてりあ
みなそこでなくした瞳
それらが壷にみちあふれる。
榲悖のふくらみ
空間のたるみ
そして愛の重み
蟲めがねの中なる悲哀。
【冬】
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ふところに電流を仕掛け
眞珠頸飾りのいりゆじよん
ひかりまばゆし
ぬつとつき出せ
餓ゑた水晶のその手を……
おお酒杯
何といふ間拔けな雪だ
何と……凝視るゆびさきの噴水。
【いのり】
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つりばりぞそらよりたれつ
まぼろしのこがねのうをら
さみしさに
さみしさに
そのはりをのみ。
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