【燕】
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霞める空に、友よびかはし。
翅も輕く、とぶつばくらめ。
馴れにし去年の、軒端やかはる。
古巣たずねて、こゝかしこ。
あはれ其つばくらめ。
誰がかけにける、印の糸ぞ。
おもひの色も、さながらなるを。
結びし人は、行方も志らず。
をちかへりつゝ、わびしらに。
あはれそのつばくらめ。
【暮色】
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聞ゆる、鐘の音。
煙こめつゝ、ほの/\暮れゆく、黄昏。
雲路分けて、歸る村烏。
五つ、四つ、二つ、遠近に。
空ゆく、浮雲。
つひのよすがは、眺むる袂の、夕露。
星の光、今ぞきらめくや。
一つ、三つ、七つ、こゝかしこ。
【親睦會】
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吹くとなき風に亂れて散る花を
とる盃の霞にうけて
あなおもしろのけふのまとゐや
暮れぬともよし語らはん花の蔭
肌寒き風にきほひて鳴く蟲も
かきなす琴の調に入りて
あな心ゆく夜半のむしろや
更けぬともよしうたげせん月の夜に
【春朝】
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朝日に匂ふ花の色 霞に迷ふ鳥の聲
曉しらぬ眠も覺めて 見るものに聞くものに
心浮き立つ春のあしたの空や 空
袖寒からず吹く風に 靡ける柳散る櫻
心の駒ぞそゞろに勇む 思ふどち野に山に
手綱引きつれいざや遊ばむいざや いざや
【親友】
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同じ机に書讀みかはし 一つ硯に墨すりあひて
學の窓の明暮さらず 睦びし友あはれ其友
嬉しき事も又憂きふしも 共に語らひかたみに告げて
力となりもなられもしつゝ うたゝこゝらの年月も經ぬ
あはれ其友 志ばしと言ひて立ち別れしは 去年の此月
三月すごさで歸り來なんと 頼めしものをあはれ其友
【山中雑興】
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瀧の響松の風 心とはに清く
花の色鳥の聲 月日そゞろに長し
雲を分けて苔に臥し 露に醉ひて歌ふ
峯の春谷の秋 誰か知る此こゝろ
【古城】
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山もさくべき鬨の聲
矢さけびすごく十重二十重
攻めよる敵を一まくり
拂ふや花の朝あらし
烈しかりつる跡とへば
けふさへ寒し千早風
岩垣崩れ岨くえて
跡はかもなき山畑に
むかし尋ねて飛ぶ小蝶
よし其あとはうもるとも
朽ちぬ其なの花の色は
今も匂へりかぐはしく
【霜夜の鐘】
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とほちの鐘の聲さやかに聞えて
板屋の霜の上に更けゆく夜の月
越山併せ得しその世の秋も
志のばるゝ空に鳴きゆく雁がね
功業期しがたく年人を待たず
傾く月に身を照らして思へば
あゝあゝ幾ばくの我が世の程ぞ
更くる夜の影はよそにはめぐらじ
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