リア☆リア☆カーニバル!

〜そのに〜

もこもこピンクの青菜あえ




「ピンクのうし」騒動が、シィルに対するリアの謝罪で落着した数日後。
夜、何者かがシィルの部屋の扉を叩いた。

「はい・・・今開けます。」

そう言ってシィルがドアを開けると、そこには、リアが立っていた。
妙に神妙な面持ちをして。

「リア様・・・、こんなお時間に、どうなされたんですか?」

怪訝な顔をするシィルに構わず、リアは、

「ちょっと、お話したいの。入ってもいい?」
と、シィルに言った。

「はい・・どうぞ。」

部屋に入ったリアは、勝手にベッドに腰かけた。そして

「ここに一緒に座ってお話しましょ。」

と、シィルを手招きする。
うながされるままにリアの横に腰かけるシィル。
シィルは、リアの次の言葉を待つが、
リアは、じっと床を見つめ、口を開きかけては、また閉じ、
なかなか言葉を出せないでいる。

しばらくの間、二人は無言のまま、座っていたが、
やがて、リアがぽつりぽつりと話し始めた。

「あのね、こないだはごめんね。」

こないだというのは、「ピンクのうし」事件のことである。
それに気づいたシィルは、リアの顔をのぞき込んで、言った。

「いいんです、リア様。ちゃんと謝ってくれましたし。」

「ううん。あれから、もし私がシィルとおんなじ目にあったらどうだったか、
想像してみたの。
ダーリンやマリス、かなみにジュリア、レイラ、バレス、他の城内のみんな、
いや、世界中のみんなが、私のことに気付いてくれない。
誰も私のことに気付かず、もしかすると鍋の材料にするため殺さたかもしれないって
考えると、凄く怖かった。怖くて怖くて、涙が止まらなかったの。」

「・・・。」

「こんな怖い体験を、私はただのわがままで、シィルにさせちゃったんだなぁ、と思うと、
自分がとっても恥ずかしかった。なんて私は馬鹿なんだろう。なんて他人のことを考えて
無かったんだろうって。」

「リア様・・。」

奔放に育てられ、人の気持ちを慮る事を教えられずに育ったリア。
迷惑をかけられた人間も不幸だが、迷惑をかけてしまっていることに
気づかない人間も不幸だ、とシィルは感じた。

「この間は、ダーリンに怒られて、みんなに無視されたから謝ったけど、そんなの本当に
謝ったことにならないわよね。
で、考えたの。どうしたら、シィルにちゃんと謝ったことになるのか。
口先だけだったら何でもできる。プレゼント送るのもごまかしよ。
じゃあ、私の体でごめんなさいって気持ちを表したらいいんじゃないかな、
と思ったの。見て・・・」

そう言うなり、リアは、身につけていたドレスを一気に脱ぎおろした。

「リア様、それは・・・」

シィルが驚いたのも無理はない。
そこに現れたリアの裸体は、下着をつけておらず、
その上荒縄で体中くまなく縛られていたからだ。

「あと、手と足を縛ると、私は動けなくなるわ・・・。
シィル、お願い。リアを、この鞭でたたいて!蝋燭をたらして!
リアの体をシィルの思いのままにお仕置きして!
そうじゃないと、私、きっといい子になれない!
お願いよ、シィル!お願いっ!」

「・・・はい・・・分かりました、リア様・・・」

涙を流して懇願するリアを見て、シィルは、沈痛な面持ちでうなずいた。


「では・・・いきますよ・・・リア様」

「うん・・・お願い・・・」

シィルは、ゆっくりと、リアの身体に鞭を振るった。

パシン・・・

ほんの申し訳程度の、乾いた音が響く。

「あん・・・そんなんじゃだめぇ・・・もっと・・・もっと強くぅ・・・」

「え・・・ですが・・・」

「リアがいいって言ってるんだからいいの・・・もっと・・・」

「はい・・・」

うなづいてシィルは、先程よりもやや強めに鞭を振るった。

パシッ・・・

「あっ・・・いい・・・」

一瞬、愉悦の表情を浮かべるリア、しかし、すぐに渋い顔に戻り、

「もっと強くしてぇ・・・まだ、まだ足りないのぉ・・・」

と、シィルに言った。

「では、もう少し強くします・・・」

パシッッ・・・

「もう少し強くしてぇ・・・それに、背中だけじゃなくて、
太ももも、お尻も、おっぱいも、乳首も、リアの体中叩いてぇ・・・」

「う・・・、分かりました・・・リア様がそうおっしゃられるなら・・・」

パシンッパシンッ

シィルの振るう鞭が、リアの太ももと尻を襲う。
リアは、顔をさらに上気させ、嬌声を上げた。

「あんっ・・・いいっ・・・そこっ・・・いいっ・・・
シィル、もっと、もっとお尻を叩いてぇ・・・」

「リア様・・・」

パシンッ「あんっ・・・」パシンッ「くふぅっ・・・」
パシンッ「ひあっ・・・」パシンッ「くぁぁぁぁんっ」
乾いた鞭の音と、一瞬遅れて発せられるリアの美声。
それは、淫美な調べを演奏しているようだった。

・・・

シィルが鞭を振るい続けて、かれこれ30分は経っただろうか。
両手両足を縛られ、芋虫のようにベッドに転がっているリアは、
体中を真っ赤にさせながらも、なおもシィルに命じていた。

「あっ・・・くぅっ・・・だ、だめぇ・・・まだ・・・だめ・・・
シィルっ・・・もっと・・・もっとリアをたたいてぇっ・・・!」

しかし、「九尾のキツネ君」を握っているシィルの右手は、
しばらくたっても、動く気配はなかった。

「はぁ・・・はぁ・・・どうしたの?シィル。疲れちゃったの?
それだったら、今度は蝋燭をリアにたらして。
リアね・・・気持ちいいの・・・まだ、痛くないの・・・。
これくらいじゃ、リア、謝ったことにならない・・・。」

そう言うリアに対し、シィルは、今にも泣きだしそうな顔で、ポツリと言った。

「・・・リア様、もう、やめましょう、こんなこと・・・。」

その言葉を聞いたリアに、驚きの色が浮かぶ。

「どうして?リアは、シィルに謝りたいの。もっともっとシィルにひどい事されなきゃ、
リア、悪い子のまんまなのよ。」

「間違ってます・・・こんな謝り方なんか・・・。
わたし・・・こんな謝りかたして貰っても、嬉しくないです・・・。」

うつむいて、そうつぶやくシィル。
痛々しい姿のリアを、直視できないでいた。

「いいの!リアがこう謝りたいから、こうしてるだけなの!普通の謝り方と違っても、
リアが納得してるんだからいいでしょ。
ほら、早く続きをしてよ!続けてくれなきゃ、また『うし』にしちゃうわよ!
それでもいいの??」

「いいです・・・『うし』になっても・・・。相手を辱めなきゃ許しあえない関係なんか、
本当の・・・信頼じゃ・・・ないです・・・うっ・・・うっく・・・ひっく・・・」

うつむいたままそう言ったシィルは、やがて大粒の涙をあふれさせた。
それを見たリアは、はっ、と息をのみ、あわててシィルに声をかけた。

「シィル・・・ごめん・・・ごめんね・・・また、リア、わがまましちゃったね・・・
やっぱりリア、まだ、シィルの気持ち、分かってなかったね・・・
リアは平気でも、シィルがつらいんだったら、やめなきゃいけないのにね・・・
また、『うし』にするって・・・また、つらい思いさせようとして・・・
あやまんなきゃいけないのに・・・ごめんね・・・シィル、ごめんね・・・
リア、もうどうしていいか・・・ごめん・・・ごめん・・・」

そう言ってリアも、ぽろぽろと泣きだした。
しばらくのあいだ、部屋の中には、鳴き声のみが満ちていた。

ややあって、少し気持ちが治まったシィルが、リアに話しかけた。

「リア様、いいんです・・・もう・・・リア様には・・・私・・・
十分謝って貰ってます・・・だから、もう、泣かないで下さい・・・」

「ひっ・・・ひっく・・・ぐすっ・・・ほんとにいいの?・・・うっく・・・」

「はい・・・ですから、これは、ほどきましょう・・・。」

シィルは、リアの手と足を結んでいたロープをほどいた。
戒めの解けたリアは、シィルの胸へすがり、泣きじゃくった。
自分の未熟さに対して。
シィルの優しさに対して。

「うわあぁぁぁん・・・シィル・・・・シィル・・・!
ごめん・・・ごめん・・・」

ただただ泣き続けるリアを、シィルは、優しい手つきで、そっと抱きしめた。



翌日。

謁見の間にやって来たリアを見て、ランスはなにかいつもと違う感じを受けた。

「どうした、リア。目のあたりが真っ赤に腫れてるぞ、何があったんだ?」

そう、昨晩ずっと泣き続けたため、
リアの顔は、誰が見ても分かるくらい泣き腫らしていた。

「べーっ、ダーリンには内緒。」

「内緒と言われると、知りたくなるのが人情ってもんだ。
さあ、きっちりと吐けい!。」

「だーめ、内緒ったら内緒なの。」

つかみかかろうとするランス、それをかわすリア。
玉座のまわりを舞台に、鬼ごっこが始まる。
ドタバタと騒がしく走り回っているそんな所へ、
ふらっとシィルが入ってきた。

「ランス様ぁ、マリス様が呼んでらっしゃいますよ・・・」

ちょうどそこへ、ランスから逃げ回っていたリアが走り込んできた。

「きゃぁーーーっ!シィルどいてぇ!」

ドシンッ!!

あわててよけようとした二人だが、その努力もむなしく、盛大にぶつかってしまった。

「いたたた・・・リア様、大丈夫ですか?」

「う、うん・・・大丈夫・・・。シィルの方こそ、怪我はない?」

「あ、はい。大丈夫です・・・。」

二人のそんなやり取りを見たランスは、さらに妙な感じを受けた。

「ん・・・?いつもだったら『何邪魔してんのよ、この奴隷!』という感じで
怒るんじゃないのか??」

怪訝な顔をするランスに対し、リアは、ぺろっと舌を出してこう言った。

「だから、それは内緒なの☆」

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