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目から鱗の算数問題A
 トラックの周差の授業
 
 福山市立水呑小学校
 教諭  粟 村 啓 史
 


 第6学年での授業実践である。
 前時までに、左図に示す学習内容(外側の半円の長さは、同一直径内に並ぶ幾つかの半円の長さの和に等しい)を復習しておく。このことは、本時授業の伏線となる。
 
 



(発問1)
  前時にやった5年生の復習では、どんなことが分かったのですか。
 
 
 ここではあまりしつこく時間をとらず、
    ・外側の半円の長さは同一直径内に並ぶ幾つかの半円の長さの和に等しい
 という学習内容を想起させる。続いて、「今日の学習はこのことを踏まえて考えて下さい」と、本時学習の方向性
 を伝えておく。



(説明1)
  今月の末には運動会があります。そこで今日は、運動場のトラックのセパレートコ
  ースの周差について学習します。どんな秘密があるのか、先ほどの学習内容を踏
  まえてじっくり考えてみましょう。
 

 別紙(【図2:プリント】と同じ)のような学習プリントを配布し、次のように発問する。



(発問2)
  トラックは10m×20mの長方形を基に、横長に作ってあります。その1m外側にコ
  ースラインを引きました。このトラックの一周の長さと外側の一周の長さを求め、
  更にその長さの差を求めなさい。
 

 約5分後、全員が計算できたことを確認し、3名の子に黒板に書かせる。ここで、セパレートコースの幅が1mの場合、周差は6.28mであることを確認する。ここまでが前段である。前学年での学習内容の復習を兼ねている。そして次のように発問する。



(発問3)
  今、周差は6.28mであることが分かりました。それではここで問題です。この差の
  6.28mを目に見える形に表してごらんなさい。
 


 これが本時のメイン発問である。しかし、この瞬間の子ども達は呆気にとられている感じだった。そこで補助発問として、次のように問うてみた。



(発問4)
  この差の6.28mとは、いったい何の差なのですか。
 


 子ども達は、口々に「カーブの差」であると即反応した。そこで、次のような補助説明をしてやった。



(説明2)
  そうです。カーブの差ですね。直線部分は同じですから、周差には関係ないというこ
  とが分かりますね。じゃあ、「カーブ」に着目したらいいんじゃないの・・・ 。プリントの
  紙を有効に使って下さい。切ったって折ったっていいんです。どうすれば「目」に見え
  るようになるか。誰と相談してもいいです。前時の学習内容がヒントですよ。
 


 その後10分間、自由試行の時間をとった。教室の至る所に小グループができた。
   
目に見えるように表すためにはどうすればいいのか

プリントを折ったり切ったりしながら思考活動を続けていた。(大半の子はプリントを折るという所まではできるのだが、そこから先に進めないで戸惑っていた。机間指導をしながら下図のように折っただけでは移動させられないので、円周部分を切り取って移動させながら考えたらどうかと促した。
 しばらくすると、大円の直径の長さと小円の直径の長さの差2mに着目し、2×3.14 をしたら 6.28 になることに気づく子が出てきた。


しかしその子はまだ、目に見える形に表すことはできないでいた。そこで、その子に、自分の考えを黒板で発表するよう促した。                  


 その子は左図のようにそれぞれの円を動かし、それぞれの円の直径の差が2mであり、3.14をかけると6.28になること、そしてそのことが関係しているのではないかという考えを述べた。
するとその子の考えを発展させ、円になることに気づいた子が、右図のように直径2mの円を書き上げた。


 












 

そして、
周差の6.28mは直径2mの円周として目に見える形に表せる

ことを全員で確認した。しかしこの時点では、まだ前時学習の図1との関連については十分気づいてはいないようだった。そこで、図1との関連について説明し、次のような話をしてこの授業を締めくくった。



(説明3)
  図1の問題は、「長さを比べましょう」だけでは計算問題の勉強だけで終わってしま
  います。しかしちょっと見方を変えると、生活の中にこの算数の内容を見つけ出すこ
  とができます。生活の中で、習った算数を見つけだし感じることができたら楽しいじ
  ゃあありませんか。先生は、算数を勉強する目的の一つは、「ものの見方・考え方
  を広く豊かにしていくこと」だと思っています。そのためにも、皆さんはこの1年間、
  「規則性や決まりを見破ること」と「順序よく考えること」を心がけ、算数の勉強を楽
  しんで欲しいと思います。皆さんの活躍を期待しています。頑張りましょう。
 


                                         

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