×3と3×2の違い
 


 大阪書籍「小学算数」3年下P.57に次のような文章題がある。



問8)1本90円の絵筆を86本買いました。   何円になりますか。


 

問9)のり子さんの組は36人います。 えん   ぴつを1人に4本ずつくばります。えん   ぴつは、ぜんぶで何本いりますか。
 


 まず、問8を読ませた。その後、



(指示1) 今読んだ文章に、必要な線を引きなさい。
 


と指示する。文章題の文章には、




 
 分かっていることには真っ直ぐ線
 問われていることには波々線
 問われている単位を○で囲む、


の3つの作業をすることにしている。その後、全体で引いた線を確認する。



(指示2) 式と計算と答えを書きなさい。
 


 横線を使って書くこと、まず式を書き、次に筆算で計算し、式と答えを完成させる、というこの手順を再確認しながら机間指導する。2〜3分後、黒板に書かせて答え合わせをする。まだできていない子には書き写すように指示する。そして、



(指示3) 終わった人は、問9の問題を読み、必要な線を引きなさい。終わった人は○
     ○先生の所に持っていって丸をしてもらいなさい。それができた人は、ノート
     に問題を解いて粟村先生の所に持っていらっしゃい。
 


と指示する。子ども達は、教科書の文章題の問題文に必要な線を書き込み、○○先生の所に持っていく。丸してもらった子はノートに問題を解いて私の所に持ってくるのだが、しばらくは立て続けに×(バツ)の連続である。子ども達は、「あれーぇ」「おかしいなぁー」「えー!」という声を立てる。しばらくしてやっと一人正解。正解者には、「よし、合格!!」と大きな声で元気よく言ってやる。次々に持ってくる。だんだん合格者が増えてきた。全員を見終わったところで、一人の子に黒板に書かせた。もちろん、式と筆算と答えの3点セットを。
 問9の問題に対して、最初は「36×4」という式を書き、筆算もそのように行っている子がほとんどなのであった。これらの式に対しては、全部に×をした。そしてしばらくすると、「4×36」という式を書いて持ってくる子がでてきた。その後だんだん波及してきて、全員○になったところで、次のように問うた。



(発問1) 「36×4」と「4×36」はどう違うのですか。
     「4×36」なら正解で、「36×4」ならどうして違うのか、これらの違いがはっきり
     分かるように説明して下さい。
 


 しかし子ども達、この発問に対してはほとんどの子があまりピンときていない。何を言っていいのか分からない、といった感じなのである。そこで、問い方(問題)を変えた。



(発問2) 「2×3」と「3×2」はどう違うのですか。違いが分かるようにノートに書いて持
      ってらっしゃい。
 


 この発問にはすぐ反応できたようだ。が、なかなかいい説明が書けない。「かけられる数とかける数を入れ替えても答えはいっしょ。」なとどという、既習の内容を書いて持ってくる子が多い。しばらく待ったがいい説明を書いた子がいっこうに現れないので、また次のように言い直した。



(発問3) 「2×3」とはどういう意味なのですか。「3×2」とはどういう意味なのですか。
      それぞれの意味をノートに書いてご覧なさい。
 


 子ども達は「2×3は」と書き始めた。机間指導の中で、「2×3は2が3回あること」という文を書いている子を見つけた。私はその子に発表させ、素晴らしい意見であることを伝え、誉めた。



(発問4) 「2×3」とは2が3回あることです。では「3×2」とはどういう意味なのですか。
 


 同じように言えばよいとすぐ分かった。そして子ども達は、「3×2とは、3が2回あることです。」と答えた。そこで次のように発問した。



(発問5) ではそのことを算数の式で書き表してご覧なさい。
 


 「式に表す」ということが分かりにくかったようだ。そこで、「2×3とは2が3回あることです。」という表現を



 「2×3とは2を3回足すことです。」
 


といい変えてやった。それを聞いて子ども達は、



 2×3=2+2+2
 3×2=3+3
 


と反応した。そこで、



(指示4) 2本×3人、3人×2本というように、2には本、3には人という単位をつけて書
      いてご覧なさい。
 


と指示した。そして子どもの発表を基に次のように板書した。





 

×3人=2本+2本+2本Þ
×2本=3人+3人Þ
 


そして



(説明1) かけ算では、かけられる数についている単位が答えの単位になります。
 


と説明した。そして、発問1に戻って、子ども達に答えさせた。子ども達は大体次のように意見を述べた。



・36×4は、36が4回という意味だから、
  36人+36人+36人+36人=144人になる。
・4×36は、4が36回という意味だから、
  4本+4本+4本+4本+4本+4本+4本・・・+4本=144本になる。
・だから問9では、「ぜんぶで何本いりますか。」と「何本」と問われているの
 で、4×36でないといけない。
 


 文章題指導では、単位に着目させることが大切なのではなかろうか。単位に着目させることは、式の意味を正しく把握することにつながるように思われる。