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 目から鱗の算数問題@
  新幹線の座席の授業
 
  

                         福山市立水呑小学校  教諭  粟村啓史



 新幹線の座席は、通路を境に、2人掛けと3人掛けという具合に分かれている。左右同じようにするのが自然じゃ
 ないか。では何故に「2」と「3」なのか。これを新幹線の機構上からではなく、純粋に「数」という面から数学的に考
 えていくことはできないものか。という思いの中から取り上げた題材である。
 結論から言うと、



 2より大きい正の整数は、2の倍数と3の倍数の和の形で表すことができる。
 


ということである。これは、帰納法により数学的な証明もできている。
つまり、新幹線の座席は、 



 何人乗っても、一人も余らないように座ることができ、ひとりぼっちになる人を作らなくて済む。
 


ということである。

 以下、これを6年生の教室で、TTで授業したときの実践記録である。
 
 

(発問1) 
  左右対称にはどんな「よさ」がありましたか。
 

 「タージマハルの写真」、「マッターホルンと湖」、「平等院鳳凰堂」の写真を見せながら問う。子ども達からは、
  ・見た目がきれいな感じがする。
  ・どっしりと落ち着いた感じがする。
  ・自然の美しさがある。
などの反応があった。
 次に、2人掛けと3人掛けの「新幹線の座席」の写真を見せながら、



(発問2) 
  左右対称にした方が見た目も美しく、その方が自然でもあるのに、新幹線の座席
  はどうしてこんな不自然な席の並びにしてあるのだと思いますか。予想でいいで
  すから、言ってご覧なさい。
 

と問う。子ども達は、
  ・釣り合いを保つために片方側を重くしてあるんだと思う。(機構上のこと)
  ・作った人が、この方がかっこいいと思ったから。
  ・3人で座りたい人もいるかもしれないから。
などの反応があった。
 

(説明1) 
  JRの人の説明では、一人でも多くの人に座っていただくために3人席を作ったと
  いうことでした。でもね。これを数学的に見たときに、先生はすごく面白いことに気
  が付いたんです。これ、すごく便利がいいんです。
 


と、このように説明した後、


(発問3) 
  通路を境にして、2人掛けと3人掛けになっています。こうすることによって、どん
  な便利なことがあるのでしょう。予想でもいいです。
 

と問う。「数」に着目した考えを期待したのだが、子ども達からは、
  ・5人でも座れる。
という類の反応があった。



(説明2) 
  こういう席の並びにしてあると、何人で乗っても一人も余らないように座ることがで
  きます。ひとりぼっちを作らなくても済むんだよ。
 

と、説明した後、



(指示1) 
  新幹線のこの座席は本当にひとりぼっちを作らなくて済むのか、もしそうなら、な
  ぜそうすることができるのか、プリントを使って各自で確かめていきましょう。
 

と指示した。2人掛けと3人掛けが分かるようにして書いた「新幹線の座席」のプリントを各自に持たせ、まず、2人
〜13人までの場合で、席の埋め合わせ方を考えさせた。例えば、「7人だった場合、席をどう埋めたらいいか。」
「11人だった場合、席はどう埋めたらいいか。」といったようにである。
 各自が2人〜13人についての席の埋め合わせ方をプリントに書いた後、紙で作った2人掛けのピースと3人掛けのピースを使って、(2人〜13人についての席の埋め合わせ方を)黒板に出て貼らせた。
 そして、



(発問4) 
  このことから、座る人数と座席の数が分かるように「式」に表してみよう。各自で考
  えた後、班で考えをまとめてご覧なさい。
 

と指示した。そして、各自プリントに「式」を書かせた。班員全員で相談してもよいということにした。「式」は、



 (総人数)=(2人掛け)×(座席の数)+(3人掛け)×(座席の数)
 


で書くように統一した。「式表現」は、「数」によっては一通りではないものもあるが、例えば次のように表している。

・2=2×1+3×0        ・3=2×0+3×1
・4=2×2+3×0        ・5=2×1+3×1
・6=2×3+3×0 または 6=2×0+3×2
・7=2×2+3×1
・8=2×4+3×0 または 8=2×1+3×2
・9=2×0+3×3 または 9=2×3+3×1
・10=2×5+3×0 または 10=2×2+3×2
・11=2×1+3×3 または 11=2×4+3×1
・12=2×6+3×0 または 12=2×3+3×2
・13=2×2+3×3
 
 
 ここで、別の数を3つほど出した。



(発問5) 
  13まではできましたね。では、例えば、「59」「87」「131」についてはどうでしょ
  う。同じように「式」に表してご覧なさい。
 


 これは、早くできて暇になった子がいたら出してみようと思っていたものである。だから、あまりしつこくならないように、さっと扱った。

・59=2×25+3×3
・87=2×30+3×9
・131=2×40+3×17
 
 
 そして、次のように問うた。



(発問6) 
  新幹線の座席は「ひとりぼっちを作らない」と言えそうですね。なぜそうなるのか、
  数の持つ不思議な決まりを見破り、新幹線の座席の秘密を探ろう。上の式からど
  ういうことが分かりますか。自分の考えをもったら、班で考えをまとめてご覧なさい。
 
 
 この辺までくると、「2の倍数」と「3の倍数」に着目した考えを持つ子が増えてくる。が、それをどう表現したらいいのか迷っているという子もいるようである。
  ・「2の倍数」と「3の倍数」がある。
  ・「2の倍数」と「3の倍数」の足し算になっている。
 
 そこで、次のようにまとめた。
 
 
 


 2以上の正の整数は、2の倍数と3の倍数との和の形で表すことができる。

             2の倍数   +  3の倍数


 

[ あ る 数 ]=[ 2 × ○ ]+[ 3 × □ ]
 


 
           (2人掛け×席の数)+(3人掛け×席の数)

 


 そして、次のように言って、この授業を終了した。

 

(説明3) 
  もともと新幹線の席は、一人でも多くの人に座ってもらおうということで3人席を作
  ったそうなのですが、それを、数に着目するという別の目で考えていくと、とても面
  白いことを発見することができましたね。逆に言うと、このことを知っていれば新
  幹線の座席を上手に利用することができますね。これを「算数のよさを生かす」と
  言います。修学旅行の時には積極的に役立てていきましょう。
 


 子ども達からは、次のような感想が聞かれた。
   ・新幹線の座席で算数の勉強になったから、とても面白かった。
   ・数が全部、2の倍数と3の倍数とで表せるから不思議だと思った。
   ・いつもと違う勉強だったから面白かったし、楽しかった。


                                      

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