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環境の授業
 
   福山市立水呑小学校 教諭
               粟 村 啓 史


 この授業は、1993年度に第5学年で実践したものである。当時の授業メモを基に、実践記録として再現するよう努めた。当時「ツーウェイ」や「トークライン」(あるいはその他の書物)の中で向山先生が提唱されていた「サイクル図」の考え方を通して、自分も何らかの授業実践をしてみたいと思ったのだった。
 まず子ども達にエコマークを見せる。ここから授業の始まりである。エコマークは、図1のものから周りの文字を取り除いた、図2のものを提示する。

※図1は、エコマークの周りに「ちきゅうにやさしい」「みどりのほご100%古紙」と書いてある、普通のエコマ ーク。図2は、そのエコマークからそれらの文字を全部取り去ったもの。文字のない図の部分だけを提示する。









 

【図1:エコマーク】 








 

【図2:エコマーク】








 



(発問1) このマークは、どういうことを表しているのでしょう。
 

 子ども達からは「手で何かを抱えているようだ」という声がすぐに聞かれた。続いて、「環境のマークや」とか「自然を守ろういうことや」という声も聞かれた。そこで私は、
      (1)このマークは「エコマーク」という名称であること、
      (2)earth(地球)やenvironment(環境)の頭文字から考えられたものであること、
      (3)地球を両手で優しく包んでいるという姿から、地球の環境保護をアピールするマークであること。

の3点を伝えた。続いて、幾つかのエコマークを見せながら、地球環境保護によい商品をアピールする運動は1978年からドイツで始まったということを伝えると共に、現在では、フロンガスを使わない商品や生ゴミなどで海や川を汚さない商品(ex.三角コーナーの水切り袋)、食用油をゴミとして捨てることのできる新しい処理方法の商品などが開発されていること、また二酸化炭素や炭酸ガスが出ない自然エネルギーを利用した設備もできているということを伝えた。
 その後、地球環境保護の観点から、「生物」と「森林」の持ちつ持たれつの関係を考えさせた。



(発問2) この図(図3)は、「生物」と「森林」はお互いにお互いのために何
     かを提供しあい、お互いに役立っているという関係を示していま
     す。図の中の四角(空白)の中にはどんな言葉が入ると思いますか。

 
 子ども達はすぐには分からないようであった。しばらく考えていたが、酸素と二酸化炭素の問題であることに気づいた。(ア)が二酸化炭素で、(イ)が酸素である。
そして、このように循環している図を「サイクル図」ということを伝えた。
続いて次のように発問した。



(発問3) 図(図4)の四角(空白)の中に言葉を入れ、森林(木)が資源として
     活用され、再び二酸化炭素となって循環していく様子をサイクル
     図に表してご覧なさい。
 


           
 これも子ども達には難しいようだったが、「燃やすと二酸化炭素が出る」という発言から、(ウ)は私達が使い終わった後の「ゴミ」だと気づいた。そして(エ)は私達が使う前の物で、木から作った(紙などの)製品であると考えることができた。続いて次のように発問した。



(発問4) 木を切り続ければ森林は減ってしまいます。世界中で1年間にどれくらい
      の広さの森林が無くなっていると思いますか。
 


 答えやすいように、@日本の面積と同じくらい、A日本の面積の半分くらい、B日本の面積よりももっと多い、という三択形式にした。児童は全くの予想で反応する。10名前後、ほぼ同数に近い。その後、正解はA日本の面積の半分くらいであることを伝えた。続いて、次のように発問した。



(発問5) 森林が無くなり、資源が無くなったら大変なことになってしまい
      す。森林資源を守るためにはどうすればいいと思いますか。
 


 子ども達からは、「植林、木を増やす」という考えや「古紙再生、リサイクル」といった考えが出された。そこでここでは「古紙再生、リサイクル」をとりあげ、先ほどの図4に次のように書き加えた。(図5)

※下の図5は、図4の(ウ)にゴミ、(エ)に加工品と書き、図4と同じく2つのサイクルを示している。そして、そのサイクルの「森林」→「資源」→「加工品」の2つの矢印の部分に×を書き入れるのである。つまり、途中でサイクルが途絶えてしまうということである。そうなったらどうするか。リサイクルである。「ゴミ」→「古紙回収」→「加工品」→「私達」→「ゴミ」という新たなサイクルを作るというふうに考えるのである、と指導した。

 その後私は、あらかじめ用意していた2種類のトイレットペーパーを1ロールずつ見せ、「この2つは何がどんなふうに違うか分かりますか。」と尋ねた。見かけには何の遜色もない、同じように見えるトイレットペーパーである。子ども達の中からは、「どっちかが再生紙や」という声が聞かれた。その通りであった。一方はバージンパルプ(パルプ100%)で4ロール208円、もう一方は古紙再生紙で4ロール168円であった。一概には比べられないが・・・と前置きしながらも、一応ここでは古紙再生紙の方が安いのではないかと考えられるということを確認した。そして次に、古紙再生に関わる問題点について考えさせた。



(発問6) 今のところリサイクルは環境保護にとって有益な方法の一つです
     が、古紙再生にも問題が無いわけではありません。古紙から再生
     紙を作るときに、どのようなことが問題点として考えられますか。
 


 この場合の問題点の一つは、古紙の黒っぽさを解消するために(紙を白くするために)多量の薬品や洗剤が使われるということである。使われたそれらの薬品や洗剤が海や川に流れ、海や川を汚すのである。環境破壊につながるかもしれない問題として調べてみたい問題である。このことも先ほどの図5に書き加えた。

※下の図6は、図5の左横に「海・川」と「薬品・洗剤」という部分を書き足し、図5で示したサイクルとともに、左側に点線矢印で、「加工品」→「薬品・洗剤」→「海・川」→「私達」という流れも示している。


 


 続いて、余談ではあるが、「回収業者の失業」という古紙回収における他の問題点を紹介した。これは、リサイクル運動が盛んになってきたことや、貿易摩擦から古紙を輸入しなければならないことなどから、国内では古紙の量も少なくなり、回収業者にとっては儲けにならなくなり、失業に追い込まれる人もいるということなのである。
 続いて、牛乳パックの古紙再生を例に取り、具体的数字を示して説明した。牛乳パックは上質の紙で作られている。1リットルパック100万個分が立木680本分に相当するそうである。牛乳パックは年間32億個使われており、全部回収すると、17万本から21万本の立木が助かるのだそうだ。但し、牛乳パックから牛乳パックは再生されない。牛乳パック用のパルプは100%パージンパルプの上質でなければならないので、牛乳パックがリサイクルできるといっても、それはトイレットペーパーなどに生まれ変わるのであって、牛乳パック用の原木は常に新しく必要なのである。ちなみに、1リットルパック30個から5個のトイレットペーパーに生まれ変わるのだそうである。
 その後、古紙回収再生紙も一つの方法だがそれだけに頼るわけにはいかないこと、もっと広い視野で地球環境を守ることを考えなくてはいけないことを伝えると共に、地球を守るのは地球に住む私達一人一人の課題であり、自分にできる身近な所から環境保護努力をしていかなければならないことを伝え、自分にできる「身近な環境保護宣言」を考えさせた。
 尚、この授業は、「ツーウェイ」や「トークライン」、有田先生の本などから学ばせていただいたことを基にして考えました。



                                                       
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